4.23.2010

Aphidae vs predator


アブラムシは、卵の形をした体の小さな昆虫で、植物の汁を吸って生きています。一口アブラムシといってもその種類はとても多く、現在、約4400種が知られており、それぞれ寄生する植物によって種類(生態)が異なります。その中の一種、大豆アブラムシは大豆の汁が大好きで、大豆の葉が成長する夏の畑には、無数のアブラムシが葉の裏にびっしりと付きます。そしてこのアブラムシは、卵を産みつようとする寄生バチに狙われます。この寄生バチがアブラムシの体に卵を産み付けると、アブラムシの体は薄茶色にミーラ化し(写真2)、その中から寄生バチの子供が生まれます。アブラムシは繁殖力が非常に高く、その数は爆発的に増える事もありますが、寄生バチのような天敵の存在よってある程度その数が制御されます。このように、生態系は微妙なバランスの上に成り立っているのです。


従来の農業システムにおいて、害虫を駆除するために化学農薬を使用するのが一般的です。しかし、化学農薬は環境に対する負荷が大きいため、極力農薬の使用を抑えるのが理想です。更に、化学農薬の散布をし続ける事によって、害虫が徐々に抵抗性を示し、その効力は低下してしまいます。従って、生産者は、一種の害虫を駆除する為に、新しい農薬にいつでも頼らなければなりません。アブラムシを捕食する寄生バチを利用して、作物の害虫であるアブラムシを駆除する事が出来るかもしれません。化学農薬のかわりに、害虫を捕食する天敵を利用して害虫をやっつけるという新しい技術は、生きる農薬=「生物農薬」と呼ばれています。


アメリカの昆虫学者は、大豆アブラムシと天敵(寄生バチ)の生態、多様性を観察し、その結果、数種の寄生バチがアブラムシに寄生する事が分かりました。また、これらの寄生バチは、標的のアブラムシのみに寄生し、環境に有害影響を及ぼさないことも確認されました。


輸入される外来天敵種は、自分の生態系が異なる環境外で育つと、爆発的に増殖してしまう可能性があります。もともとアブラムシに寄生する在来天敵である寄生コバチを利用する事で、生態系を乱す事はありません。また、化学農薬を使用すると、仕事を一度停止しなくてはならず、しかも化学農薬にはコストがかかります。こうした点から、在来天敵を利用した生物農薬の開発には、IPM(総合的病害虫管理)の技術の一つとして期待が持たれます。実際に、生物農薬はアメリカのオレンジ生産で発生するカイガラムシを天敵のテントウムシで駆除したり、日本でもナスの生産にマルハナバチを使用する等、実践的に在来天敵を利用した害虫管理が行われています。

http://www.youtube.com/v/rLtUk-W5Gpk&hl=ja_JP&fs=1&
Photo by Brigantino

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